東洋はり灸整骨院 院長の石丸です。今回は当店で実際に行っている鍼灸施術の様子をお伝えしたいと思います。
さまざまな症状の方が来店されるので、実際はその症状に合わせた施術を行いますが、鍼やお灸などの施術に用いる道具や大まかな様子をご紹介できればと思います。
鍼灸院はそれぞれ異なる
まず前提として、鍼灸院はその鍼灸院ごとに実践している内容がまったく異なります。使う道具、理論、使う道具などが違うだけでなく、そもそも東洋医学かそれ以外かという違いもあります。
当店が実践しているのは日本伝統鍼灸の中の経絡治療(けいらくちりょう)です。経絡治療とは、経絡とよばれるツボの道を使って改善していく治療体系の一つですが、実際の様子をご紹介していきたいと思います。
【動画解説】当院の鍼灸について
純金の鍉鍼
まず、当店では純金の鍉鍼(ていしん)を使用しています。鍉鍼は爪楊枝ほどの長さのツボにあてるだけの刺さない鍼です。ツボにあてるだけで効くのかと思うかもしれませんが、十分に効果があります。
経絡治療では目に見えないものを扱って施術をします。ツボや経絡はもちろん、東洋医学における気・血・水もとくに気はみえないものです。しかし、「気」が「病む」と書いて「病気」と読むように、気は存在しています。
鍉鍼を用いて、こういった目にはみえないものを操っていくような感じだと考えてください。
天空の気・大地の気・術者の気
次に鍉鍼の使い方をご説明します。よく使われるツボとして、手のひら側の手首のしわの線上に太淵(たいえん)というツボがあります。この太淵に鍉鍼をあて、天空の気・大地の気・術者の気を合わせて経絡に流し込みます。そして、お腹が上がった瞬間に鍉鍼をパッと抜きます。これは非常に東洋医学らしい方法なのですが、天空の気とは何なのかと思うことでしょう。
皆さんも神社に行くと、空気が澄んでいてスーッとすることがあると思います。反対に空気汚染されたような場所では気持ち悪いと感じると思いますが、これが天空の気です。また、薄着や裸足で芝生に寝転がると気持ち良いと感じるのは、大地の気を得ているからなのです。
これら天空の気・大地の気に術者の気を合わせて経絡に流し込むことで生命力を上げていきます。生命力が落ちると症状が出てきてしまいます。50代、60代になって症状が出てくるのは20代、30代の若いときには元気だった生命力が落ちてくるからです。この生命力を上げるために鍉鍼を使用しています。
東洋医学は非科学的な世界
さらに鍉鍼をツボにあてる際には鍼灸の押手(おしで)という技法を使います。押手の形には非常に大きな意味があり、お釈迦様の手を意識して行います。非科学的な世界だと思うかもしれませんが、東洋医学とはそういうものです。
科学ですべてがわかっているかというと、そうではありません。症状があって病院に行っても原因不明のケースが多いのもそのせいなのです。
先ほど、天空の気・大地の気・術者の気を交えてお腹が上がったらパッと抜くと言いました。なぜパッと抜くのかと言うと、東洋医学の古い書物に「気を補ったら気が漏れないように左手で蓋をして、弓矢のごとく抜きなさい」と書いてあるからです。
実はなぜそうすると良いのかはわかりません。しかし、臨床結果が良いことからそうするようにとの教えなので、それを実践しているわけです。
ステンレス製の使い捨て鍼
当店では鍉鍼の他にもステンレス製の使い捨ての刺す鍼も使用します。このステンレス製の鍼は、もっとも細い0番から始まり、順に7番まで太さの種類があります。当店で使用している鍼は0番と1番なので、非常に細いものになります。鍼が太くなるとかなりの刺激鍼になるかと思います。
2番目に細い1番の鍼でも注射針の50分の1程度の太さなので、刺した鍼を抜いても血は出ません。
このような使い捨ての鍼は、合谷(ごうこく)などのツボに刺したままにして少し時間を置くこともあります。また、背中の痛みに効果的なツボの陰陵泉(いんりょうせん)などに鍼を細かく抜き刺しする雀啄(じゃくたく)という技法を使う場合もあります。鍼を刺す深さは5ミリほどなので、すぐに抜けてしまう程度です。
鍼灸院によっては強く響かせるところもありますが、当店では響きは求めていません。
国産最高級のもぐさ
最後にお灸をご紹介したいと思います。
まず、当店ではもぐさに火をつけるための線香は鍼灸用のものを使っていません。実は鍼灸用の線香には接着剤が含まれています。お客様はもちろん、われわれ鍼灸師は毎日この煙を吸うことになります。接着剤を含む線香では化学物質を吸うことになり、病気になってしまうので、お値段は少々高めですが、当店ではお寺で使われている不純物を含まない自然の線香を使用しています。
また、当店では国産最高級のもぐさを使用してお灸をしています。火をつけるだけの既製品のお灸を使う鍼灸院もありますが、伝統鍼灸を実践する者としては、これは家庭用の安物です。本当の伝統的な鍼灸とは国産最高級のもぐさを鍼灸師が一つ一つ捻ってお灸をするものだと私は思います。
実際のお灸ではもぐさをお米の半分ほどの大きさで捻り、線香で火をつけます。もぐさは最後まで燃やさず、七分目、八分目程度で消すのでほんのり温かく感じるくらいです。お灸を消すときは手でつかむので鍼灸師の指先は少し黒くなりますが、空気を遮断することで消しているのでそれほど熱くはありません。
この他にも知熱灸という少し大きめのお灸もあります。知熱灸も昔は最後まで燃やしていたそうですが、今はそんなことはしません。七分目から八分目で消すので、ほんのり温かい程度から熱いの「あ」くらいの感覚です。
刺激の少ない鍼灸で生命力を上げる
当店で使用している鍼灸の道具と施術のおおよその内容をご紹介しましたが、当店の経絡治療はお子様も受けられるようなものなので、刺激は非常に低いと言えます。
余談ですが、お子様には一切、鍼を刺しません。小児鍼の場合は鍉鍼の丸くなっている方を使い、経絡に対してなでていくだけです。さまざまな経絡をなでていくことで喘息などは本当に改善されます。また、夜尿症の改善や風邪が引きにくくなるといった効果も期待できます。
当店の施術では純金の刺さない鍼で気を補い、その補った気を全身のしかるべきところにまわしていきます。そのときに行う鍼の抜き刺しやお灸でさらに生命力を上げる様子などもご紹介したので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。